2026年10月16〜17日
ずっと、ずっと撮りたかった蝶がいる。
サツマシジミ。
透き通るような青と白の翅を持つ、小さなシジミチョウだ。
特にオスの翅表が美しい。
光の角度によって青く、白く、銀色にも輝くその翅に、昔から憧れていた。
小さい頃、図鑑で見たときに、他のシジミチョウにはない青と白のオスの翅の表に釘付けになったのを覚えている。
初めてこの蝶を探しに行ったのは、7年前。
当時は何も分からず三重県の南伊勢まで足を運んだものの、結局一頭も見つけることができなかった。
それから、九州で偶然会えるも、翅の表は見ることが叶わず…
その後、何年も、秋にはほかの蝶を撮影したり、遠くへ旅をしたり。
サツマシジミとの再会を果たせないまま、時間が過ぎていった。
去年、久しぶりに1泊2日で三重県へ向かった。
ようやく出会えたのは、数頭のメス。
初めて実物を見られたことがうれしくて、夢中で撮影した。
でも、どうしても見たかったオスの青い翅は、結局見ることができなかった。
そして2026年10月。
今年こそ、あの青を自分の目で見たい。
できれば、翅を広げたところも、飛び立つ瞬間も、写真に残したい。
そう思って、再び三重県へ向かうことにした。

ひだまりのシソ群落を飛ぶ、サツマシジミ♂
7年越しの再挑戦
今回の旅は、1泊2日の車中泊。
高速道路は使わず、愛知県から三重県南部へ。かなりの長距離運転になる。
前日にはレンタカーを借り、荷物を準備した。
狙うのはサツマシジミのオス。
去年の経験から、すでに撮影したことのある場所だけを回っても、思うような写真が撮れるとは限らない。
天気予報は今日と明日が良さそう。
昨年訪れた10/23よりも1週間早めを狙い、蝶たちがよく集まるシソの開花とタイミングを合わせる作戦。
そこで出発前、Googleマップの衛星写真を何度も眺めた。
沢の形、河原の広がり、周囲の植生。
過去の撮影記録も参考にしながら、サツマシジミがいそうな環境を探し、いくつもの候補地に印をつけた。
もちろん、衛星写真だけで蝶の居場所が分かるわけではない。
現地に行ってみたら、まったく見当違いかもしれない。
それでも、自分で調べた場所に自分の足で行ってみる。
そんな探索も、蝶の撮影の大きな楽しみだ。
翌朝、4時頃に起床。
まだ暗いうちに家を出て、三重県へ向けて車を走らせた。
不思議なことに、長時間の運転もまったく苦にならない。
これからどんな景色に出会えるだろう。
どんな蝶が飛んでいるだろう。
そんなことを考えながら走っているだけで、もう楽しい。
暗い中運転を始めて、次第に空が明るくなり、海辺から登る太陽を見ながら道中をゆく。
8時頃、最初の目的地に到着した。
去年と同じ場所で in南伊勢町
最初に訪れたのは、去年サツマシジミのメスを撮影した南伊勢の場所。
予想どおり、シソの仲間の花が咲いている。
よかった。まだ花が残っている!
さっそく周囲を探してみる。
すると、あっという間にサツマシジミが現れた。
メスだ!!!

透過光で透けるサツマシジミ♀
去年と同じ場所で、今年も会えた。
淡い青白色の翅に、黒く縁取られた美しい模様。
今回は飛翔や花との組み合わせなど、いろいろな角度から撮影できた。
朝の光も美しく、逆光に透かした翅も印象的だった。
特にお気に入りは葉にとまったところを、生息環境とともに撮影した写真。

白い雲に負けないほどの純白にうっとり。
秋が深まりつつある山を背景に。
しかし、今回の最大の目標はオス。
周囲を歩き回りながら探すものの、なかなか見つからない。
メスには何頭か出会えた。
でも、オスがいない。
やっぱり今年も難しいのかな。
そう思いながら、最後にもう一度周辺を探してみると――。
いた!!!サツマシジミのオスだ!!!
ただし、翅はかなり傷んでいた。

表を見るのは人生初ということで、撮影を試みた。
これだけ飛び古しても、美しさを感じてしまう。
それでも、僕にとっては初めて出会うサツマシジミのオス。
証拠写真を撮り、じっくり観察する。
ようやくオスに会えた。でも、まだ満足できない。
初っ端から大成功とは行かず、またまた焦らされる…
ああ、どうしても、状態のいい子の、あの青い翅が見たい。
南伊勢では1時間ほど撮影し、次の場所へ向かうことにした。
目指すは尾鷲。
ここからさらに車を走らせる。
衛星写真で見つけた、未知の河原
尾鷲には、去年サツマシジミのメスを撮影した場所がある。
しかし、去年そこでは一頭しか確認できなかった。
今回はもっと多くのオスに出会える場所を探したい。
そこで、過去の実績地へ向かう前に、新しく目をつけた沢沿いを探索することにした。
やっぱりサツマシジミは沢沿いに多そうだ。そこにシソの花の群落が見つかれば、きっとたくさんの子に会えるはず…
「あの美しいオスの表を見て、撮影できたらどれほど嬉しいか…」
そんな想像をしながら、沢を探し回る。
もちろん、簡単にはいかない。
地図では良さそうに見えた場所も、実際に歩いてみると、想像していた環境とは違う。
河原が歩きにくかったり、植物の生え方が違ったり。
そもそも、沢に降りられなかったり。
何か所か見て回ったが、なかなか手応えがない。
ところが。
事前に印をつけていた、ある河原へ向かうと、景色が変わった。
石や砂礫が広がる河原。
その縁に草地が続き、シソの仲間が群生している。
まさに、探していたような環境だ。本当にあった!!!
しかも、花の周辺をよく見ると、小さな蝶が飛んでいる。
サツマシジミだ!!!
それも、オス!!!
最初に見つけた個体は、かなり翅が傷んでいた。

川の流れの中を煌めくように飛んでいた。
早く新鮮な子にも会いたい!
シソの周辺に長くとどまり、花を訪れたり、近くで休んだりしている。
しばらく観察していると、別の個体が現れた。
今度は、状態のいいオスだ!
しかし、その新鮮さに思わず息を呑む。
うわあああ、青い!!!スカイブルー!!!
川辺を舞う時に見えるその青色は「空色」が頭に浮かんだ。

川の煌めきに青い翅が映える!
飛んでいるオスの翅は、想像していた以上に美しかった。
青と白が混ざり合い、光の角度によってキラキラと輝く。
濃い青になったかと思えば、次の瞬間には空色のように透き通って見える。
なんて美しい蝶なんだろう。
あまりの美しさに、山の中で一人、ため息を漏らしてしまった。
ただ、その綺麗なオスは、少し撮影できただけですぐに飛び去ってしまった。
一方、最初に見つけた傷んだオスは、いつまでたっても同じ場所にいる。
ああ、この綺麗な個体が、あの子みたいに長くいてくれたらいいのに!
そんなことを思いながら、しばらく待ち続けた。
目の前を飛ぶ、青い宝石
一度ほかの場所も探してみたが、やはり最初の河原が一番良さそうだ。
結局、あのシソの群落へ戻ることにした。
すると、さっきの傷んだオスが、まだいる!
そして、とても新鮮だけど後翅の片方が少しだけ欠けているオスを発見。
(この子はこの二日間で一番一緒にいる時間が長かった。)

光の加減によって、青い部分は光沢を放つ。美しすぎる…

上の写真と同じ子。こうして見てみると、
羽には傷がなく、毛も生えそろっていて、写真を見返しても幸せな気分に。
そして今度は、メスも飛んできた。
これがまた、めちゃくちゃ綺麗な個体だった。

翅を少し開きかけているタイミング。
しばらく撮影していると、雲が太陽を隠した。
その瞬間。
メスが翅を開いた!!!

曇り空も相まって、しっとりとした雰囲気に。
白と青みがかった灰色の鱗粉と黒い縁取り、♂とはまた違った美しさだ。
うわあ、綺麗すぎる!!!
白に近い淡い青色と、くっきりした黒い縁取り。
サツマシジミのメスも、本当に美しい。上品と呼ぶにぴったりな翅。
強い日差しの下ではなかなか翅を開いてくれなかったのに、光が和らいだ途端、見事な翅表を見せてくれた。
今回の観察では、光の変化と蝶の行動の関係も興味深かった。
その後もオスが現れ、最終的にこの河原では複数のオスを確認できた。
ただ、綺麗な個体ほど、なかなか思いどおりには撮らせてくれない。
静止しているときは翅を閉じていることが多い。
そこで、飛び立つ瞬間を狙う。
一瞬だけ広がる翅表。
シャッターを切る。
もう一度。
また飛ぶ。
また撮る。
何度も繰り返しているうちに、撮影枚数はどんどん増えていった。

木漏れ日の中、シソから飛び立った瞬間。
陽の光を受けて青色の部分が少し紫っぽく輝いた。
1日目で、♂の表をなんとか撮影できて一安心…
でも、難しい。
ピントが合ったと思えば翅の角度が惜しい。
青が綺麗に出たと思えば、背景がうまくまとまらない。
理想の一枚まで、あと少し。
そんな写真が何枚もあった。
気づけば午後になっていた。
山に囲まれた場所なので、夕方になると太陽が隠れるのも早い。
そして、長時間いてくれたオスも、いつの間にか姿を消してしまった。
もう十分撮影した。
何より、明日の朝もある。
今日はこの河原でオスを撮影できただけでなく、翌朝もう一度訪れる場所まで見つけることができた。
これは大きな収穫だ。
少し名残惜しいけれど、撮影を終えることにした。

海も川もすごく綺麗なところで、また来たくなる場所だった。
温泉と、おいしいご飯と、思いがけない親切
一日中歩き回り、夕方にはもうヘロヘロ。
最後に気になる場所を少し確認してから、温泉へ向かった。
朝から長距離運転をして、炎天下の河原を歩き回っていた体に、温かいお湯が染み渡る。
ああ、幸せだ。
湯上がりには休憩所で、今日撮影した写真を見返した。
青い。
本当に青い。
何度も眺めてしまう。
ただ、改めて大きな画面で見ると、惜しい写真もたくさんある。
明日はもっと集中して撮ろう。
そう思いながら、今度は夕食へ。
おいしい魚料理を食べたいと思っていたのに、メニューを見ていたら唐揚げ定食が食べたくなってしまった。
結局、注文したのは鶏の唐揚げ定食。
お座敷に案内され、ゆっくり食事を楽しむ。
すると、なんと。
お店のマスターが、アラの煮付けをサービスしてくださった!

これが、めちゃくちゃおいしい!!!
魚の旨味がぎゅっと詰まっていて、甘辛い味付けも最高。
巨大な骨がたくさんあり、どんな魚だろうかと思った。
思いがけない親切が、本当にうれしかった。
知らない土地へ行き、蝶を探し、おいしいものを食べる。
そして、そこで暮らす人の優しさに触れる。
ああ、旅っていいなあ。
心もお腹もいっぱいになって、お店を後にした。
今夜は車中泊。
明日の撮影に備えて、早く眠ろう。
……と思っていたのだが。
まさかの事件が起きた。
車の中に、蚊が大量に入り込んでいたのだ。
その数、おそらく10頭ほど。
次から次へと現れる蚊と、車内で大格闘。
まさか蝶を追いかけた一日の最後に、こんな虫との戦いが待っているとは……。
何とかほとんど外に追い出して、ようやく眠りについた。
翌朝、太陽が差し込むのを待つ
10月17日。
朝7時頃、目を覚ました。
昨夜はいろいろあったけれど、ぐっすり眠れた。
今日は、いよいよ本命の撮影だ。
昨日見つけた河原で、オスの翅の表をもっと美しく撮りたい。
ただ、ここで少し迷った。
昨夜車を停めた場所の近くには、去年サツマシジミを見た海沿いのポイントがある。
朝の時点で、そこにはすでに日が当たっていた。
一方、昨日の河原は谷筋にある。
今向かっても、まだ日陰かもしれない。
それなら、先に海沿いを少し歩いてから、昨日の河原へ向かおう。
そう決めた。
海沿いの場所では、思いがけない発見があった。
なんと、サツマシジミのオスが、セイタカアワダチソウの花を訪れていたのだ!
ただし、民家に近い場所だったため、撮影はできなかった。
それでも、また別の場所でオスに出会えたことがうれしい。

サツマシジミもこうして海といっしょに撮影するのが今後の目標!
草むらに入ったせいか、首にじんましんができて、涙と鼻水が止まらなくなった。
くしゃみを連発しながら運転し、昨日の河原へ向かった。
そして8時30分頃。
昨日の河原に到着した。
まだ、直射日光は当たっていない。
でも、もう少しで太陽が差し込みそうだ。
よし、ちょうどいい。
少し疲れも残っているし、アレルギー反応も落ち着かせたいので、15分ほど目を閉じて休憩することにした。
そして、再びシソの群落へ。
ここから、忘れられない時間が始まった。
朝日とともに現れた、7頭のサツマシジミ
太陽が差し込んだ。
それまで静かだった河原に、温かい光が広がっていく。
すると――。
どこからともなく、サツマシジミが現れ始めた。
最初に出会ったのは、少しだけ翅が欠けたオス。
あれ?
昨日、ずっと撮影させてくれた、あの子じゃないか!
同じ個体のように見えた。
昨日から何時間もお世話になったオスに、また会えた気がしてうれしくなる。
そして、そのオスが目の前で翅を開いた。
うわあああ!!

じっくりとこの目でもあの白と青の翅を堪能することができて、もう幸せ…
美しすぎる!!!
念願の、サツマシジミのオスの開翅。
ずっと見たかった青と白の翅が、目の前に広がっている。
もう夢中だった。
ところが、驚きはそれだけでは終わらない。
さっきまでほとんど蝶の姿がなかったのに、気づけばあちらこちらにサツマシジミが飛んでいる。
一頭、二頭。
あっちにも、こっちにも。
いつの間にか、視界の中に何頭も!
最終的に、この朝だけでオス4頭、メス3頭を確認した。
7頭ものサツマシジミ!!!
なんて幸せな光景なんだろう。
昨日の午後とは、まるで別世界だった。
朝日が当たり始めるタイミングによって、こんなにも見え方が変わるのか。
もちろん、これが毎日同じように起こるとは限らない。
でも、少なくともこの朝は、太陽が差し込んだ後に、サツマシジミの姿が一気に目立つようになった。
本当に面白い。
そして、そのとき。
目の前に、ひときわ大きく、美しいオスが現れた。
ずっと憧れていた、青と白の翅
そのオスは、これまで見た個体よりも大きく感じられた。

これぞサツマシジミというイメージ。スマホで指と一緒に撮影。
ルリシジミやヤマトシジミよりも大きいことが伝わるだろうか。
そして、何より美しかった。
まもなく、目の前で翅を広げ始めた。
青い。
白い。
光を受けるたびに、色が変わって見える。
ほかの青いシジミチョウとは、また違う美しさ。
濃い青の部分があるかと思えば、透き通るような白銀色の部分もある。
まるで小さな翅に、青空の色を閉じ込めたみたいだ。

大きくて、そしてため息の出る美しさ。
この子は、開き癖?があるようで
とまっては翅を開くのを、短時間で何度も繰り返してくれた。
あと、他の個体よりも日陰の丈の低いシソの花ばかりを訪れていた。
個体によってかなり動きが違うように見えて、面白い観察だった。
ああ、これが見たかったんだ。
7年前、一頭も見つけられなかったサツマシジミ。
去年、ようやくメスに出会えたサツマシジミ。
そして今年。
ついに、この青い翅を、目の前で何度も見ることができた。
本当に、本当にうれしい。
しかも今回は、眺めるだけではない。
何とかこの美しさを写真に残したい。
止まって翅を開く姿を撮影する。
飛び立つ瞬間を待つ。
一瞬の動きに合わせて、シャッターを切る。

お手本のように、翅をバチっと開いた瞬間を捉えることができた!
難しい。
でも、楽しい!!!
飛び立つ瞬間、翅の角度が変わると、青の輝きも大きく変わる。
ある角度では深い青。
別の角度では、鮮やかな空色。
そして、白銀色の部分がキラキラと光る。
撮っても撮っても飽きない。
蝶を見つけて、行動を観察して、光を考えて、飛ぶ瞬間を待つ。
撮影した写真を確認して、また挑戦する。
そんなことを繰り返しているうちに、時間の感覚がなくなっていた。
気づけば10時30分。
もう2時間ほど、ほとんど休まず撮影していた。
あっという間だった。
今回、草むらに入ったときには首にじんましんが出て、涙や鼻水まで止まらなくなった。
それでも、目の前にサツマシジミが飛んでいると、つい夢中になってしまう。
もちろん、体調管理は大切だけれど。
それほどまでに、撮影に没頭していた。
そして、ようやく。
ずっと憧れていたオスの翅表を、納得のいく形で撮影することができた。

これが特にお気に入りの写真で、
裏返った葉のうらにとまっているのだけど、
なんだかメロンに止まっているみたいで、かわいい♡
よくみると、ストローを伸ばそうとしている。
最高の2日間だった
まだまだ撮りたい写真はある。
できればアケボノソウも見たかったし、海を背景にした蝶の写真も撮ってみたかった。
でも、不思議と心残りは少なかった。
昨日まで、あれほど探していたサツマシジミのオス。
その美しい青い翅を、今日は何度も見て、何度も撮影できた。
7年前から憧れていた光景を、ようやく自分の目で見ることができたのだ。
もう、大満足!!!
時計を見ると、まだ10時半過ぎ。
いつもの僕なら、ここからさらに粘っていたかもしれない。
もう少し待てば、もっと美しい写真が撮れるかもしれない。
別の場所へ行けば、もっと珍しいものに出会えるかもしれない。
そう考え始めると、なかなか撮影を切り上げられないのだ。
でも、今回は違った。
帰りは一般道で5時間ほどの運転になる。
明日からの仕事もあるし、何より、もう十分に満足していた。
今日はここで終わりにしよう。
そう決めて、名残惜しい河原を後にした。
5時間の帰り道
帰り道は、のんびり行くつもりだった。
お昼ご飯を食べて、途中で昼寝もして。
2回か3回くらい休憩を挟みながら、無理せず帰ろう。
そう考えていた。
ところが。
いざ運転を始めると、これが不思議なくらい楽しい。
今回出会った蝶のこと。
自分で見つけた河原のこと。
これから撮影したい蝶のこと。
そして、今後の創作活動や、これからの暮らし方のこと。
長い道のりの中で、いろんな考えが頭に浮かんでは、少しずつ整理されていく。
普段は家で仕事をしている時間が長い。
朝起きて、運動して、文章を書いて、WEBサイトを作って、夕方から家庭教師。
そんな日常も、とても気に入っている。
でも、こうしていつもと違う景色の中に身を置くと、普段とは少し違った角度から、自分の生活を眺められる気がする。
これから何を作りたいのか。
どんな場所へ行ってみたいのか。
自分にとって、どんな時間が大切なのか。
考えているうちに、これからやりたいことが次々に浮かんできた。
早く写真を整理したい。
WEBサイトに今回の旅を残したい。
制作中のカレンダーも、もっと多くの人に届けたい。
次はどんな作品を作ろう。
どんな蝶に会いに行こう。
ああ、早く帰って、また創作がしたい!!!
そんな気持ちでいっぱいになっていた。
結局、途中で何度も休むつもりだったのに、気づけば5時間ほど運転して、そのまま帰宅してしまった。
自分でもちょっとびっくり。
今回はたまたま元気に帰れたけれど、長距離運転では、もちろん無理は禁物だ。
それにしても、出発前にはあれほど運転を心配していたのに。
旅とは面白いものだ。
帰宅しても、まだ旅は終わらない
夕方、無事に帰宅。
荷物を下ろして、レンタカーを返して、片付けを済ませる。
さすがに疲れているはずなのに、気持ちはまだ興奮したまま。
そして、我慢できずにパソコンを開いた。
今回撮影した写真を取り込んで、さっそく確認する。

初日も2日目も長い時間、一緒に過ごして、いろんな姿を見せてくれた。
♂が翅を開いたのを見られたのも、この子が初めてで感慨深い。
うわあ、綺麗だ……。
画面に映る、あの青い翅。
撮影中にはゆっくり眺められなかった細かな模様や、光によって変わる色彩。
何度見ても飽きない。
そして、その日のうちにInstagramにも投稿してしまった。
7年越しに出会えたサツマシジミのオス。
その美しさと、今回の旅の感動を、早く誰かに伝えたかったのだ。
疲れているはずなのに、楽しくて仕方がない。
ようやく帰宅したのに、もう次の作品を作り始めている。
自分でも、ちょっとおかしくなってしまう。
でも、こういう時間が本当に好きだ。
そして、いつもの朝へ
その夜は早めに眠った。翌朝、6時に起床。
いつものようにランニングをして、坐禅をする。
旅先での興奮から、少しずつ日常へ戻っていく。
とはいえ、目にはまだ撮影の疲れが残っている。
2日間、夢中で蝶を探し、撮影していたのだから当然だろう。
それでも、創作意欲はまったく衰えていなかった。
むしろ、旅に出る前よりもずっと強い。
さっそくパソコンを開いて、写真の整理を進める。
WEBサイトの記事も書きたい。
カレンダーの販売準備も進めたい。
頭の中には、やりたいことが次々に浮かんでくる。
あれほど長い時間運転し、河原を歩き回ったというのに、なぜかまた仕事がしたくなっている。
もちろん、体の疲れまでなくなったわけではない。
今日は無理せず、できることから少しずつ。
でも、今のこの気持ちは大切にしたい。
蝶を探す旅が、僕に教えてくれること
実は今回の旅、出発するかどうか、ギリギリまで迷っていた。
せっかく遠くまで行っても、目当ての蝶に会えるとは限らない。
そして、日常にはやるべき仕事も、作りたいものもたくさんある。
本当に今、旅に出ていいのだろうか。
そんなことを考えていた。
でも、思い切って出発して、本当によかった。
自分で調べた沢を歩き、シソの群落を見つけ、念願のサツマシジミのオスに出会った。
目の前を飛ぶ青と白の翅に、何度も心を奪われた。
温泉に入って、おいしいものを食べて、旅先の人の優しさにも触れた。
帰り道では、これから自分が何をしたいのかを、改めて考えることができた。
そして帰宅してみると、もっと写真を撮りたい、もっと文章を書きたい、もっと作品を作りたいという気持ちが、以前にも増して強くなっていた。
蝶を探す旅は、いつも僕に、自分が本当に大切にしているものを思い出させてくれる。
そして何より、ただ純粋に楽しい。
夢中になれる。時間を忘れてしまう。
そんな瞬間が、自分の人生には欠かせないのだと、改めて感じた。
7年前、一頭も見つけられなかったサツマシジミ。
去年、ようやくメスに出会えたサツマシジミ。
そして今年、ついに撮影できた、憧れの青い翅。
きっと何年経っても、あの河原に差し込んだ朝日と、目の前に広がった青と白の輝きを忘れないだろう。
ああ、やっぱり旅に出てよかった。
そして、また蝶を探しに出かけよう。
この旅で撮影した蝶たち





翅が透けて、真珠のような輝きを放っていた。

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